今回は2021/1に開催された医科との連携を推進する為のセミナーのレポートをお届けします。
講師は歯科と医科のダブルライセンス保持者でいらっしゃいます松本先生です。
セミナー概要
高齢者が最期まで自分の口から食べられるようにするには医科だけでは困難な部分がかなり多い。(医科だけだと嚥下評価も難しく、食べさせられない…)
そこで必須になってくるのが歯科の介入である。
医科歯科連携という言葉はよく耳にするがまだまだ十分ではないのが現実だ。
特に年間10万人が亡くなっている「誤嚥性肺炎」については歯科こそが主導権を握れる分野である。
歯科医師や歯科衛生士が行う口腔ケアで誤嚥性肺炎が減少することも分かってきている。
つまり歯科は1人の人の最期を決める重要な役割を持っていると言える。
さらに歯科に来る年齢層は医科よりも低いので早いうちから関わることが出来るのも歯科の特徴。
その点も歯科が持つ大きなメリットである。
義歯と寿命の関係性をご存知でしょうか?
臨床の場ではあまり義歯と寿命の関係について考えたことは無いと思うが実に興味深いデータがあり、まず義歯を使用している人は十分な歯を保持している人と比較して1.3倍死亡率が高い。
さらに歯を喪失し、かつ義歯を使用していない人は1.5倍死亡数が増加する。
この事から如何に自分自身の歯を健康に保つことが大切か、また歯を喪失してしまった場合に口腔内にしっかりと適合した義歯を使用重要性を思い知る。
日常的に診療しているとこの様な症例はないだろうか。
義歯を新製したがなかなか合わず調整を繰り返したり、結局前の義歯の方が良かったと患者判断で使用してくれないケースだ。
義歯と寿命のデータを知るとやはりしっかりと適合した義歯の使用が重要だと分かる。
患者にこの情報を与える事が義歯を正しく使ってもらうきっかけになるかもしれない。
また歯科治療やプロフェッショナルな口腔ケアを必要としている要介護者で実際に受診出来たのは30%にも満たないそうだ。
訪問歯科診療を行っている歯科医院も増えてきているが実際の充足率はかなり低い。
訪問歯科が必要だと理解している歯科医療従事者が増えてきても、背景には実際に訪問診療を行う上で準備しないといけない器具や診療時間とのバランス、スタッフの確保などが課題として多く、なかなかそこまで手が回らない事実もあるだろう。
しかし全要介護者の20%に摂食嚥下指導が必要とされており、高齢者へのプロフェッショナルな口腔ケアは認知機能低下を防ぐ役割も持っている。
体重減少を甘く見てませんか?義歯が合わなくなったのは体重減少の可能性も。
歯科では通常あまり重要視されることではない体重減少についてだが、死亡率や病気との関連があり感染症、褥瘡、薬の効きが悪いなど様々な影響を及ぼす。
体重減少の原因特定は難しく、悪性腫瘍や精神疾患、貧困や独居(孤食)など6〜28%では特定できない。
体重減少を疑った場合は総合診療科への紹介をおすすめする。
特に歯科衛生士は定期メンテナンス時に会話をしたり患者の変化に気づくチャンスは多い。
担当衛生士が決まっていればさらに医者や看護師よりもその患者の日常生活への問診はしやすい。
生活環境の変化などから体重減少に気がつくきっかけにもなるのではないだろうか。
口腔内の変化だけでなくそういった部分から全身を診れる歯科医院のメリットを活かす事が出来れば、より一層患者の健康を守ることが出来る。
そして実際に体重減少が起こった時に活用できる経口補助食品について商品名など具体的に紹介いただいたのでとても参考になりました☺
臨床の場でそこまで介入する場面は少ないが知っておいて損はないだろう。
歯科が積極的に介入したい誤嚥性肺炎について。
誤嚥性肺炎は急に起こるわけではなく必ず嚥下障害がある。
さらにその前段階には筋力低下があり、さらに筋力低下が何故起こるのかを考えると低栄養や歯周病などの負の連鎖を引き起こす要因がある。
例えば歯科の世界では有名な話で、糖尿病と歯周病の関連は既に知っている方も多いだろう。
糖尿病をコントロールをする事で歯周病の予防が出来れば将来的に歯の健康を守り、それが筋力低下を未然に防ぐ事に繋がる可能性もある。
このような点からアプローチ可能な場合もあるので様々な要因を考えなければいけない。
もちろん誤嚥性肺炎が起こらないようにする事が何より重要だが再発予防についても知っておかなければいけない。
嚥下機能について知るツールのOHATをご存知だろうか。
他職種と連携するためのツールで非歯科医療従事者が口の不健康を検知することが可能なものだ。
OHATのメリットは他職種の看護師など誰がとっても点数が同じになる点である。
ちなみに点数が低いほど嚥下機能が良い。
現在臨床現場で活躍されている歯科医療従事者でもこのようなツールを実際に使用する事は少ないが、初見の方はこれを機に是非知ってほしい。
OHATは嚥下機能を知る上で効果的に使用したいツールである。
また嚥下機能の改善は誤嚥性肺炎に罹患する確率を下げるためにも非常に重要なので今後ますます需要が増えるだろう。
繰り返しになるが、医科歯科連携はまだまだ十分ではない。
日々の診療だけではなく歯科が介入可能な事はかなり多い。
これからますます高齢化が進む中で地域に求められる歯科医院となるには訪問歯科や摂食嚥下機能への知識、どうすれば誤嚥性肺炎から患者を守る事が出来るのかを深く知る必要がある。
まずはこのセミナーで基礎を知ることから始めてみてはいかがだろうか。
視聴したい方はアーカイブがありますので、お問い合わせください。
info@plus-sum.jp
関連情報
■無料ウェビナー①
https://cf.plus-sum.jp/ika-shika-0223dd
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